第85話「それぞれの壁」アーユルヴェーダ小説HEALERS

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─よし、全開!
 自分が声を張り上げるのを、客観的に見ていた。
─いきんで!
 そのまま分娩室は、戦場と化す…
 夢。
 松下クリニックの仮眠室で目を覚ました順正は、上半身を起こすと、目をこすった。夢の中でも、お産に立ち会っていた。
 カーテンからは日射しがこぼれている。もうすっかり朝のようだ。
 夢の中では、すんなりと赤ちゃんが生まれていたような気がする。現実でもそうであれば良いのだが。
 順調なお産であれば、助産師だけで事足りる。医師は夜中までクリニックに詰めている必要はなかった。呼び出されることがあるとしたら、医師の介入が必要になる時。とはいえ、いつ異常が起こるか分からないため、基本的には医師が立ち会う。
 昨夜、一人の妊婦が産気づき、オンコール体制にあった順正は早々に呼び出された。難産になった。赤ちゃんが疲れてきていて、医療処置が必要となりかねない状況だったが、結果的にそこまでは至らず無事出産し、母子ともに健やかである。
 そして同時に、羊水が流れる感じがしたという別の妊婦を受け入れた。前期破水と診断した。三十七週を迎えていたため、そのまま入院させ、自然に陣痛が起こるのを待っているところである。
 過疎地域の産婦人科クリニック。大勢のスタッフがいるわけでもないので、深夜に出産や入院が重なると、手が足りなくなる。なんだかんだ帰り損ね、そのまま仮眠を取ったら、いつの間にか朝が来ていた…という次第であった。
 コンコン。
 仮眠室の扉がノックされ、返事をする前に扉が開いた。髪を梳かす暇もなく、順正は寝癖のついた髪を撫でつけた。
「先生、起きました?」
 看護師長はそう言って、一歩だけ部屋に足を踏み入れた。
 順正は上半身だけ起こしているが、至極眠たそうにぼーっとしている。看護師長はまるで自分の子供を見るかのように、目を細めて、
「今、朝ごはんお持ちしますからね」
 そう言って部屋を出ていった。
 時計を見ると、もう七時半である。
 掛け布団をはねのけて床に足をついても、順正はしばらく立ち上がることなく、顔を手で覆っていた。
 食事の給仕など若い者に任せておけばいいのに、看護師長は自ら仮眠室まで食事を運んだ。
「はい、今日の当直ごはんですよ」
 順正は指の間から、机に置かれた食事を見やった。季節の食材を使ったクリニックの料理はおいしいと定評がある。しかし、朝からこんなにたくさんの種類を作らなくても良いと思うのだが…
「ほら、申し送り始まっちゃいますよ」
 なかなか順正が動こうとしないので、看護師長は急かした。普段は余裕がないところを全く見せない人だけに、こんなに眠そうにしているのは珍しい。寝癖がついた順正に、つい世話を焼いてしまった。

 朝の申し送りで、夜勤だった助産師の鈴木と岡本が患者の状態を報告をする。
 昨日受け入れをした三十七週の妊婦は、今のところ感染のリスクはなさそうだが、要経過観察。二十四時間経過しても陣痛が始まらなければ、陣痛誘発を行うこととなる。
「今のところ、注意してみていく必要があるのはこの妊婦くらい…か」
 松下はそう言ってから、同意を求めるように順正の方を見た。
「はい」
 ようやく返事をすると、声がかすれていた。順正は軽く咳ばらいをして、
「昨日までで一気にお産があったので、今受け入れてる妊婦が出産すれば、しばらくは落ち着くと思います…」
 このところ、お産が続いた。松下は頷いて、
「他に報告がある人?」
 スタッフステーションに詰めている者たちは、お互いの顔を見合って、顔を振った。
 水曜の診察は午前中のみ。今日の日勤は助産師が森と新米助産師の夏目、中年の看護師が一人と、看護師長。
「あ、そうだ…」
 松下は今思い出したというように、手を打った。
「上沢中学校から、性教育講演の依頼をされて、受けることにしようと思うんだけど」
 しーんと、その場は静まり返った。
─受けるのか?
 助産師、看護師たちは、心の中で囁き合った。通常業務ですら、ギリギリのスタッフで回していて、外部の教育にかけている時間はないのだが。
「…」
 松下の隣に座っている順正は顔を俯きがちにして、微動だにしない。
「上沢中学校だけだと生徒数が少ないし勿体ないから、やるとしたら桜台中学と合同になるみたいなんだけど…どう?」
 松下の声だけが、朗らかに響いた。他の者は沈黙するばかりである。
「松下先生は、ご自身が講演するおつもりで、受けることになさったのですか?」
 ようやく、看護師長が意を決して聞いた。よくぞ聞いてくれたと他の者は期待のまなざしを松下に向ける。
「いや~」
 しかし、松下はうっすら笑いを浮かべて、
「こんな中年のおじさんが壇上に立ったら、みんな秒で眠くなっちゃうよ」
 それは、言えている。
「それよりも、目が覚めるような人が壇上に立ったほうがいいと思うんだけど。ねえ、柴ざ─」
「やりません」
 その場は、凍り付いたように沈黙をした。
 順正の肩に置こうと振り上げた松下の手は、行き場をなくし空中で揺蕩う。
「え?」
 松下は聞こえなかったふりをした。
「柴─」
「やりません」
 誰一人として、口を開けない。
「まだ何にも言ってないんですけど」
 松下は愛想笑いを浮かべながら、
「若い子たちは、僕のような初老のおじさんが話すよりも、柴崎先生が話したほうが関心を示すと思うんですが…」
 しかし、順正がテコでも受け付けないという形相をしているので、松下は順正からわずかに身を遠ざけた。そんな目で見なくてもいいのに。
「助産師が担当してもいいのでしょう。その講演は」
 順正がぼそっとつぶやいた言葉に、助産師たちは体に電撃に打たれたかのように身をこわばらせた。
「それはまあそうですね」
 松下は品定めをするように、順々に助産師たちを眺めた。
「どうしようかなぁ…森くん、どう?」
 三十歳の森は、経験も積んでいるし、働きざかりだ。名指しされた本人は、「ええっ」と言って首をすくめた。
「行け。森」
 順正がダメ押しをする。
「ポ〇モンみたいに言わないでください…」
 森は言いながら、首を小刻みに横に振った。
「普段は診察室で、月経やHPVワクチンについて、一人ひとりに話していることを、一網打尽で伝えられるいい機会だろう」
「そ、それはそうかもしれないですけど…」
 順正の言葉に、松下はそうだそうだと頷いた。
─そう思ってるんなら、柴崎先生がやればいいじゃない…!
 森は心の中でそう叫んだ。
「啓蒙すべきことはたくさんある」
 順正のドスの効いた低い声が、矢のように降り注ぐ。
「妊娠のしくみに、性的同意に…話す内容はいくらでもある」
 普段は無駄口を叩かないくせに、こんな時だけつらつらと正論を並び立てる。
「おお、性的同意はいいテーマだねえ。普段はなかなか触れられない話題でもあるし」
 松下は呑気に、順正の言うことに頷いた。
「引き受ける場合は準備もあるからね。ちゃんと勤務体制は考慮するから、そこらへんは安心してよ」
「準備、ですか?」
 森は目を見開いた。
「ああ。投影する資料を作らなきゃ。喋りたいことを書いておけば、講演するほうとしても安心だろう」
 松下はそう言ったが、順正はフンと鼻を鳴らした。
「TikTokやらショート動画世代の中学生が、冗長に喋っていたら聞いてもらえませんよ」
 もっと視覚的な展開が必要だろう。
「ほう。さすが柴崎先生」
 と、松下は感心する。
─柴崎先生って、TikTokとかショート動画見てるの…?
 他のスタッフたちは疑問でしょうがないが、怖くて誰も聞けない。
「あ、あのう…私で決定ですか?」
 森はいかにも荷が重いと言いたげだ。
「もう少し考えようか。我こそはと思う人は、僕に教えてね」
 松下は悠長にそう言うと、もう一度順正の方に向き直り、
「柴崎先生でもい─」
「やりません」
 くどい。

 診察時間開始前に、順正はクリニックを出た。今日最初の予約枠に入っている妊婦たちが、入り口から入ってくるところだった。今日は順正はいないと思ってやってきた妊婦たちは、思いがけずすれ違いになって、動揺の色を浮かべる。しかも順正は、妊婦たちがいつもは見ることのできない私服姿だった。といっても、グレーの長袖のティーシャツと、黒いズボンという、なんの飾り気もない姿。しかし、シンプルだからこそ、無駄のない体型が浮き彫りになって、妊婦たちは胸をときめかせる。
 順正は家に帰ると、一番にシャワーを浴びた。最近忙しかったことに加えて、昨日はまとまった睡眠が取れていない。当直ご飯を平らげた後は、さらに眠気が襲ってきた。
 今日はこれ以降、休日である。一日を無下に過ごすのも勿体ないと思うが、眠い。
 ピコン。
 ラインの通知だ。スマホを開くと、通知画面に、蓮のアイコンとメッセージの最初の部分が表示された。順正は瞬時にスワイプして、通知の表示を消した。ベッドにスマホを放ると、そのまま自分もベッドに倒れる。
 目を覚ましたのは十四時過ぎだった。目がぱっちり冴えている。このまま今日の残りの時間をのんびり過ごしたのでは、夜眠れそうにない。
「…」
 遮光カーテンからは、明るい日差しが漏れている。まだ外は暑そうだ。
 この狭い部屋の中には、遊び心があるようなものは何一つとしてない。本棚は医学書や専門書で埋め尽くされていて、机の上は本や書類で少し散らかっている。しかし、物置として使っている小さなロフトには、山道具がぎっしりである。
 順正は車の鍵を掴んだ。
「お…?」
 ハイウォールのオーナー・藤野は、こんな時間に珍しい人の車を見るものだと思った。駐車場にバックで停まったのは、順正の黒いランドクルーザーだった。
「柴崎さん。久しぶりっすね」
 藤野はジムの外まで順正を出迎えた。
 紺色のウィンドブレーカーと、揃いの色の登山用ズボン。濃い色は順正の締まりのある体の輪郭をさらにシャープに見せた。
 軽く挨拶を返しながら、順正は南天丸を見やった。車が見えると同時に犬小屋から出てきた南天丸は、順正に期待を込めたまなざしを向け、大人しくお座りをしている。順正はそんな南天丸の傍に片膝ついて、目を合わせた。 
「最近、あの子来てますよ」
 あの子とは蓮のことだと、順正は思った。最近どころか、ずっと前から常連のはずだが。
 蓮といえば、ラインが来ていたような気がするが、まあ大した用事ではあるまい。
 順正が腑に落ちないという表情をしたまま黙っているので、
「蓮じゃなくて、莉子ちゃん」
 と、藤野は順正の勘違いを察した。
「最初は少し、拗ねたようなところがあったけど…あの子、可愛くなりましたね」
 よくも年頃の娘のことを可愛くなったなどと言えるものだ。が、容姿ではなく性格のことを言っているのだろう。
 それにしても、あの女子中学生もここへ通っているのか。それは別に、嬉しいニュースでもなんでもない。鉢合わせたら面倒なだけだ。
「水曜だしなあ。蓮来るかもね」
 松下クリニックは水曜午後が休診なので、順正がジムを訪れる可能性が高いのは水曜日だと、蓮は勝手に思っているのだ。きっとさっきのラインも、今日来るかどうかというお伺いだろう。
「蓮は、柴崎さんを気に入ってますね」
 順正はふっと鼻で笑っただけだった。蓮がかわいそうに思えるほど、興味がなさそうだ。
─莉子は可愛くなったが、この人は全然可愛くならねぇなあ…
 と、藤野は思う。
「南天丸を借ります」
「は…?」
 言うが早いか、順正は南天丸の首輪を外した。
「登りにきたんじゃないの?」
「壁にはあとで登ります」
 順正はポケットから鍵を取り出して、藤野に預けた。
「預かってもらえますか。ジャラジャラ鳴ってうるさいんで」
「明神山に登るんですか?」
「少しは体を疲れさせないと」
 藤野はぽかんと口を開いた。産婦人科医というのは、平日にわざわざ登山をしなければならないほど、体力を使わない仕事ではあるまいに。
「行くぞ」
 が、事情を聞き出す間もなく、登山口に向かう順正と南天丸の姿はみるみる遠ざかっていく。
─この人も、ドMだな。
 ここで誰かと─特にあの蓮などと─話をしている時には、ドSさが際立つのだが…
 桜台登山口の取りつきを、南天丸は跳ねるようにして登っていく。南天丸と山へ登るのは久しぶりだった。
 さすがに栗原登山口まで往復するのには時間がかかりすぎるが、山頂までのピストンならば二時間半…
 南天丸の歩きたい速度に合わせて歩いていると、すぐにウィンドブレーカーなど不要になる。が、それを脱ぐでもなく、さくさくと登り慣れた道を進む。山の濃い緑のにおいを吸っているうちに、雑念が取り除かれていく。
 山の頂上に立ったが、今日は捨てるものがない。昨夜受け入れた妊婦は、二人とも安産だった。松下からの連絡では、前期破水した妊婦も、正午過ぎには陣痛が来て、経産婦であったためか、それからはスピード出産だったという。
 順正はスマホをポケットにしまいながら、深く息を吸った。

 その頃、莉子の義理の父・佐藤文也は、帰宅早々、身重の妻に娘のことで相談をされた。
「また出かけたみたいなの」
 中二の娘は、時折自転車でどこかへ出かけ、夜七時過ぎまで戻って来ないことがある。
「友達と遊んでるんじゃないの…?」
 美穂にそう言われるたびに、文也はそう言い聞かせた。
 しかし、女友達と遊びに行くにしては、服装が適当過ぎる。それに、帰って来た時には、その服は家を出る前より薄汚れた状態になっている。
 第一、このレジャー施設に乏しい上沢で、夜七時過ぎまで一体何をするというのか。
─不良とつるんでいるんじゃない?
 ついに美穂はそんな邪推をし、この間から文也に相談をしている。
─でも本人は友達と遊んでるって言ってるんだし…それはいいことじゃん?
 しかし、文也が楽観的な見方をすると、美穂は怒った。
─自分の娘なら、そんなこと言える?
 とは、さすがに面と向かっては言わないが、ひしひしとそう言われているのだと感じる。
 文也は主に上沢・北設楽郡でダム工事・道路工事などを行う土木作業員である。今日も早朝から北設楽へ出向いて舗装工事をしており、くたくただ。
 一日中家にいたんなら、最近どこへ遊びに行っているのか、今日はどこへ行くのか、莉子に聞くチャンスは美穂のほうにこそいっぱいあっただろう。
─自分の娘なのに、そんなことも聞けないのか。
 文也はそう言いたいのを何度も飲み込んでいる。莉子は、いつまで経っても、文也の娘ではないのであった。
「うっ…」
 美穂は軽く呻いてお腹に手を当てる。
「大丈夫?」
「うん。莉子の時よりも、よく動くの。男の子だからかな…」
 出産予定日は十月末。胎動が激しいのも、あと少しの間だろう。文也は思わず、口元を綻ばせたが、すぐにきゅっと引き締めた。
 文也はシャワーを浴び、夫婦の寝室に入るとベッドの上に寝転んだ。そこではぁ…とため息を吐く。父になるとは、喜ばしいことであるのだろうが、不安で仕方がない。それに、莉子との関係性は、まったく進歩をしていない。
─それどころか…
 莉子がいなければ、自分の不安は今、子が無事に生まれてくるかという一点だっただろうに…
 生まれて来た我が子と莉子は、うまくやっていけるのだろうか。
─莉子がいなければ…
 文也はがばっと起き上がった。
─美穂のことも、莉子のことも…
 彼女たちの心の中は、うまく計れない。コントロールすることならなおさらできない。きっと、生まれてくる子供にも手を焼かされるのだろう。しかし、それよりももっと、文也が持て余してしまうものがある。
─莉子がいなければ、こんな面倒くさい思いはしなくて済んだのに。
 そう思ってしまう、自分の心だ。
 文也はガリガリガリッと、頭を掻いた。シャワーを浴びてなだらかになった豊かな黒髪が、ぴょんぴょんと跳ねた。
 文也が階段を下りるけたたましい音がして、リビングでスマホを見ていた美穂は廊下へ出た。
「どうしたの?」
「ちょっと行ってくる」
 ちょっと行ってくるって、どこへ?
 美穂がそう声をかける暇もなく、文也は自転車にまたがって、家の外へ飛び出した。

─なぜ莉子は遅い時間まで帰って来ないのか。
 美穂から相談され、文也はこっそりと莉子の後をつけたことがあった。莉子が自転車を置いたのは、文也が想像だにしなかった場所。ジムだった。それも、ボルダリングの。その時は文也は、その外観を眺めたのみで、中を覗くことまではしていなかった。
─今日もここにいるんだろう。
 文也はジムから少し離れた空き地に自転車を置いて、そこからは徒歩でジムまで歩いた。
 女子中学生が通うところにしては変わっているが、別に隠して行くような場所ではない。そう思いながらも、文也はなぜか、ジムの中にいるオーナーや客に見つからないように、こそこそ隠れながらジムに近づいた。
 倉庫風の建物には、入口とは別に、東側に左右に開閉する扉が設けられている。中の照明の光が漏れるその扉の隙間から、文也は中を覗いた。
 正面にそそり立つ壁が見えた。クライマーたちは、代わる代わる、そこを登っている。莉子の姿は、見えない。
 一人のクライマーが、チョークバックに手を突っ込みながら壁に歩みより、マットの上に腰を下ろして、課題に取りついた。登り慣れているのか、途中まではするすると。しかし、核心部分になると、少し動きが慎重になった。
─指二本だけで…
 円形の穴が開いたホールドに、左手の人差し指と中指を挿し込み、右手で右側のホールドを取りに行く。
「ガンバ」
 男たちの太い声が次々に上がった。
 クライマーは少し弾みをつけて、左足でホールドを蹴り、右手を上に伸ばした。しかし、その衝撃を支えるにはあまりにも頼りない、のっぺりとしたホールドが次の手。クライマーの身体はゆらりと揺れ、マットに落ちた。
─ひえ~…
 見るからにしんどそうだ。あの莉子がこんなスポーツに熱中しているとは思えないのだが…
 クライマーが壁に背を向けて、こちらに体の前面を向けて立った。その顔を見て、文也は目を見開いた。
─あ…
 ゴミ収集所で声を掛けてきた、莉子の同級生だという男の子ではないか。確か名前を、蓮といった。
─おれら、あと二年もしないうちに受験なんですよ。
 思えば、この子から釘を刺されて、莉子との関係性に危機意識を持ったのだ。上沢の中学生は、高校生になると家を出る者もいると…
─仲良くなりたいって思いがあるんだったら、行動を起こすのは早い方がいいです。
 あの時は、気の優しそうな子に見えたのだが…
「反動つけすぎだぞ、蓮」
「ああ…全然ひっかからんかった」
 登る姿は存外に逞しい。大人の男たちとも、対等な口を利いている。
 それはそうと、莉子の姿は見えない。
 すぅ…と、息を吸って、文也は思い切って入り口のほうへ回った。開け放たれた入口からジムの中を覗く。カウンターにはオーナーらしき一人の男が立っているが、こちらに背を向けて、ジムスペースの方を見ている。文也もジムスペースに目を向けると、
─いた!
 莉子の姿はすぐに目に入った。奥の方の壁で、ホールドに手をかけている。百八十度、オーバーハングした壁…文也は目を細めた。
 しかし、莉子はその壁を登ることなく、マットの上を移動し、また同じ課題にトライし始めた蓮の姿を観察する。文也も思わず、顔だけをジムの中に入れて、蓮の動きを追おうとした。が、オーナーの頭が邪魔で見えない。中に入ればいいのに、身体は拒否して、入り口の扉に張り付いている。
 その時、後ろからすっと風が通った。と思ったら、誰かが横を通り過ぎ、そのまま一直線にジムスペースへの入り口に立った。上背のある男がそこへ立つと、いよいよ中の様子は見えない。
「ガンバ」
 その男が発したのだろうか。低く唸るような声が響くと、間髪入れずして、どさっとマットに落ちる音。
「おっ、柴崎さん…」
 オーナーが声をかけた時には、男は後ろを向いて文也のほうへ近づいてきた。文也は息を呑んだ。上背があるだけでなく、男である文也ですら見惚れてしまうほどの美丈夫だった。
 男は澄んだ目で文也を一瞥すると、入り口で脱いだ靴を履いて、外へ出た。
 文也は後ろを振り返ると、再び息を呑んだ。獰猛そうな、精悍な顔つきをした犬が放し飼いになっている。男はその犬を犬小屋へ誘導し、そこでようやく、その犬はリードにつながれた。
「柴崎さん…!」
 後ろから蓮の声がして、思わず文也は入り口の扉に張り付いた。蓮は顔を輝かせて、男と南天丸の方へ近寄った。
「いらっしゃい」
 さすがに、文也の存在はオーナーに気付かれた。文也は観念して、そっとジムの中へ入った。
「お客さん?」
「いえ…あ、あのう…」
 藤野の、少し威嚇するような声が聞こえて、莉子は入り口のほうを見た。
─あ…!
 莉子はおもむろにマットを下り、身を屈めて、カウンターの近くまで移動した。
「む、娘がここに来ているようで…」
「え?娘さん?」
 藤野は素っ頓狂な声を上げた。父親が迎えに来るような年の女の子は、今ジムに一人しかいない。
 莉子が膝を伸ばして直立し、カウンターの方を覗き見るのと、入り口から蓮と順正が入ってくるのとがほとんど同時だった。
「り、莉子の父です」
 蓮は、ふと顔をカウンターに向ける。ティーシャツに薄っぺらいジャージ…完全に部屋着姿の男が、そこに立っていた。
「お父さん…」
「あ、莉子」
 莉子は驚いた顔をして、ジムスペースから受付スペースへ姿を現した。

 文也と莉子は、受付スペースのベンチに並んで座っている。
 藤野は席を外し、入り口の外、二人からは死角になる場所でタバコを吸った。
「もしかして、私を探してたの?」
 莉子は、両手をベンチに付けて、時々足を浮かしながら尋ねた。
「ごめん…」
 なんで謝るんだ、と文也は心の中で自分に抗議した。
「お母さんが心配してて…莉子、結構遅くまで帰ってこないこともあるだろ?」
 遅くといっても、せいぜい七時過ぎだ。しかし、そのために夕ご飯が遅れることもあった。
「こんなところにこういうジムがあるなんて知らなかった…」
 文也はそう言いつつ、ジムの中を眺めた。ジムスペースには客が六、七人。全員男である。
「いつからここで登ってるの?」
「まだ四カ月くらいかな…」
 初めてここに来たのは、ゴールデンウィークの前だったか。
「結構登れるの?」
「ううん。まだ全然…」
「靴も、買ったの?」
「もらったの」
 莉子はそう言って、両の裸足をすり合わせた。靴は今、ジムスペースの壁に寄せて置いてある。莉子が使っている靴は、蓮のお下がりだ。しっかり洗って、部屋のベランダで天日干ししたのも、そう昔のことではない。
 それきり、二人の会話は途絶えた。
 文也は視線を所在投げに動かし、両膝の間で手を揉む。莉子は文也がいないほうの床へ視線を落とし、ただ浅く息をしている。
「…黙ってて、ごめんね」
 後をつけたことに腹を立てられているか、こっそり様子を伺っていたことを気持ち悪く思われているか…莉子からなんと言われるか、憂鬱な気持ちを抱いていた文也は、思いがけない莉子の素直な反応に、心のつかえがすっと取れたような気がした。視線を莉子から逸らしたまま、文也は、もう泣きそうになる。
「…お母さん、怒ってる?」
「…いや。お母さんは、心配してるだけだよ」
─おれも、心配している。
 とは、文也は言えなかった。
「お母さんに連絡しといてもらっていい?」
 控えめな口調でそうお願いすると、莉子はベンチから立ち上がった。
「私、もう少し登りたいから」

 順正は蓮が登っている三級課題などは、あっという間に完登してしまった。
「やんなるなぁ」
 蓮はぼやいた。
「おれはまだこんなに三級で手こずってるっていうのに…」
「…グレードなんか気にすることないって言ってるだろう」
 順正は静かに諭した。
「おれとお前では身長が違う。同じ三級でも、難度が違うんだ」
 人と比べるものではない。蓮が三級で苦戦するのは、順正が初段や二段で苦戦するのと同じなのである。自分にとって、少し難しいと思うような課題に取り組めばいいだけだ。
 蓮は順正と話しながら、後ろを通り過ぎて奥の壁に向かう莉子の存在を意識した。父親と何か話せたのだろうか。
「蓮、お前また背が伸びたな」
 マットから降りると、休憩していた前原から声を掛けられた。
「そう?」
 前原に答えながら、文也の姿が視界に入った。ジムスペースに入ってすぐのところの壁に、背中を預けて座っている。蓮はやはり、この人のことも意識してしまう。
「こんちはー」
「あ、中野さん」
 蓮は来店した客に軽く会釈した。逆三角形の筋肉質な体にぴっちりと沿うワイシャツを着、黒いスラックを履いている。
「今日は早いっすね」
「出先から直帰したんで」
 中野はカードを藤野に渡すと、颯爽と更衣室へ消えていった。
 藤野はカードを挟むと、ジムスペースへの入り口に備え付けてあるトレーニングボードに指を置き、ぶら下がった。
「…仕事帰りの人もいっぱいいらっしゃってるんですね」
 文也は藤野に、思い切って声をかけた。
「そりゃそうですよ」
 平日なのだから。
─平日の夜にジム通いなんて…
 仕事柄、仕事中に体を動かし、くたくたになって帰って来る文也には、考えられないことだ。
「このジムは強者揃い。だけどジムの外でも優秀な方ばかりですよ」
 そんなことを聞いたって、文也はなんだか卑屈になるばかりで、ちっとも仲間意識が湧かない。
「さっきの人は商社マンで営業のエースだし。あの人なんか、お医者さんっすよ」
 藤野はマットの上で壁を眺めている順正を指差した。
「産婦人科の先生。見えないでしょ?」
「産婦人科…?」
 体操座りをしている文也は、両膝をいっそう胸の方へ近寄せた。上沢の産婦人科なら、美穂が世話になっているはず。そこに考えが至と、急に顔が熱くなった。
─あんなイケメンに、診てもらっとんのか…?
 藤野は文也が黙りこくってしまったので、おかしいなあと思った。
─そういえば、莉子のお母さんは…
 義理の父と実の母との間に子供ができたことで、莉子が悩んでいるという話を蓮から聞いている。つまり、この男の妻、莉子の母親は、順正の患者である可能性があった。
─口が滑ったかなあ。
 藤野は順正から何か言われる前に、そこを去った。
 文也は改めて順正の姿を遠目に観察した。さっきから、際どい課題ばかり精力的に登っているが、疲れないのだろうか。肩幅が広く、腕は筋肉質だが、男にしては色が白いと思う。
 莉子は、なかなか休憩スペースに戻って来ない。自分がいるせいかもしれなかった。
 ふいに、隣に誰かが座った。
「おじさん、莉子が時々ここに登りに来てること知らなかったの?」
 蓮は文也の隣に座るや否や、小声で訊いた。
「あ、いや…」
 文也は莉子が遠くにいるのを確認しながら、曖昧な返事をした。
「ちゃんと話しろって言ったのに」
 ため息交じりにつぶやいた蓮の声は、ひどく掠れている。乱暴な言い方だったが、幸運なことに、文也の頭の中は今他のことでいっぱいで、蓮の声は聞こえていなかった。
「あのさ、莉子がここに通ってるのは、キミが誘ったからなの?」
「は?」
 蓮は目を見開いた。
「…ちがいます」
 きっかけにはなったかもしれない。でも、誘い合ってここへ来ているわけではない。
「キミは、莉子の友達?」
「…クラスメイトです」
 二つの違いはよく分からなかった。小さい頃は、蓮も莉子も含め、近所の子供たちとよく遊んでいた。子供の数が少ないから、年齢はまぜこぜで。だから蓮は、美穂を知っているし、美穂も蓮を知っている。
「そうなのか…はぁ…」
 文也は、なぜか目を充血させて、横に座る蓮に顔を向けた。蓮は、文也が思いつめた表情をしているので、ちょっと面喰った。
「おれは、この前キミにあんなことを言われたし、莉子は、キミが登っているところを真剣に見ているから…いろいろと想像を」
「は?なに、それ…」
 蓮は顔が熱くなるのを感じた。ほんの少し座っている位置をずらして文也から距離を取ったが、文也がすぐに間合いを詰めてくる。
「大丈夫だよね?」
「なにが?」
 順正はマットに飛び降りると、階段下の壁際で並んで話をしている蓮と文也が目に入って、ふうと息を吐いた。
「あいつは…普通に登るのが好きで、通ってるだけだから」
「登るのが好き?」
「ああ。おじさんは登らないの?」
 そう訊かれると、文也は口を閉ざした。確かに、見学でここに来ている人は一人もいない。
「おじさんも登るようになって、一緒に来ればいいじゃん」
 その方が、娘の監視もできる。
「そんなこと、煙たがられるに決まってるじゃん」
「うるせえなあ。そんなことおれに言うなよ」
 蓮は至近距離で声を大にする文也に対し、思わず本音が口から出てしまった。
「へあ。一休みだ」
 中野が蓮と文也から近い所に腰を落ち着けた。
「ちわっす。莉子ちゃんのお父さんなんですって?」
「あ、はい…」
 文也はぺこりと頭を下げた。蓮は心なしかほっとした。中野が近くにいれば、文也もひそひそ話を仕掛けてこないだろう。
「柴崎さん休まねぇなあ」
 中野のつぶやきに、カウンターにいた藤野は笑い声をあげた。
「疲れに来てますから。彼は」
「はあ?どんだけドMなんですか」
 文也は中野と藤野の会話を聞きながら、地味に心がざわついた。
「キミ、あの先生と知り合い?」
 動揺をごまかすように、蓮に話しかける。
「あ?柴崎さん?」
「平日の夜中にあんな登ってて、妊婦さんになんかあった時対応できるの?」
「対応できない時は来てないんじゃないの?」
 そもそも、蓮はここで順正の姿を見るのは大分久しぶりだ。いつもは自重しているからこそ、登れる時は思いっきり登るのだ。
「そもそも、男の産婦人科医なんて、ただの変態だろ…」
─それは確実に、あなたの偏見だと思いますが…!
 中野と藤野は同じことを心でつぶやきつつ、急いで視線を順正に向けた。聞こえていませんように…と念を込めながら。
「それに加えて、ドMのクライマー?ますます変態にしか思えない」
 中野と藤野は失笑した。
「佐藤さん…」
 呼ばれて、文也は藤野を振り返った。藤野は黙って、奥の壁を指差す。莉子が奥の壁の、四級課題に取り組むところだった。
 取りつき部分は百八十度オーバーハングしているので、腕の力だけで登っていると、すぐに腕力を消耗する。しかし、莉子は巧みに足を使って、難なく垂直壁まで登った。そこから垂直壁のホールドに足をかけるところが、その課題の核心部分である。
 男たちの視線は莉子に向いていた。女子だから…というわけではなく、莉子が一生懸命その課題に取り組んでいるのを、皆が知っていたからであった。
「ガンバ」
 誰からともなく、声が上がる。
 莉子は垂直壁のホールドにかかとをひっかけ、そこに乗り込むようにして、身体を引き上げる。
「はっ」
 文也は息を呑んだ。莉子はホールドに乗り切る前に力尽きて、マットの上に落ちた。高い所から落ちた娘の姿を見て、文也は思わず蓮の服を掴む。
「女の子があんな高いところから落ちて、大丈夫か…!」
「うるせえなあ」
 蓮は迷惑そうに文也の手を振りほどいた。ふっふっふっふと中野が笑う。
「そのうち、お父さんより逞しい背中になって、もう後ろから抱きしめてあげられなくなりますよ」
 莉子と文也が義理の親子関係だと知らない中野は、そんなことを気楽に言った。
─いや、今だって後ろから抱きしめたら犯罪者扱いですから…!
 文也は青ざめた。
─というか、仮に本当の父親だったとしても、中二女子に後ろからハグはやらないだろう。
 蓮は膝を抱えた腕の上に顎を乗せた。二人して、面倒くさい親子だ。

 莉子はもう休みたい気分だったが、休憩スペースに文也がいると思うと、なかなかマットを下りられない。
 チョークで汚れた手をこすり合わせて、もう一度ルート考察をする。
「体が壁から離れてる」
 莉子が後ろを振り向くと、順正が壁に手を掛けながら、百八十度反り立った壁の下にいる自分を覗き込んでいた。
「は、はい…」
「分かる?ちょっとその壁で試してみて」
 順正は身を屈めて壁の下に入ると、そのさらに奥の垂直壁を指した。
「ヒールをかけたら、足の付け根を壁に寄せようと意識する。そうすると自然と壁に体が張り付く」
「はい…!」
 休憩スペースからは見にくいところで、順正と莉子が二人で何か取り組んでいるのに気付いて、
「お…?」
 文也は身を乗り出した。
「なにやってるんだ?」
「登り方教えてもらってるんでしょ」
「そうなのか?」
─他に何があるっていうんだ…
 過保護過ぎやしないか?と蓮は胸の内で言った。
 莉子は最近、髪が伸びた。去年の暮頃から、髪型はずっとベリーショートで、襟足もとても短く切っていたので、頭を後ろから見ればまるで男の子のようだった。しかし、最近は髪が少し伸びても、切りに行く様子はない。もともと目がくりっと大きい莉子は、義父である自分から見ても、正直、かわいらしい。
 莉子は膝上の丈のズボンを履いていて、生足が出ている。その莉子に、かなりの変態─文也に言わせれば─と思われる男が至近距離で指導をしている。文也はだんだん、気が気ではなくなってきた。
「ちょっと、近すぎない?」
「なにが」
 蓮はうるさそうに文也を見上げた。
「大丈夫っすよ、お父さん」
 藤野は休憩スペースまで入って来て、なだめるように言った。
「体のことは、柴崎さんよく分かってますから」
「ええー!」
 が、逆効果だった。藤野の言い方にも少し問題があった。文也はあらぬ妄想を繰り広げているようだ。
「ほんっとうるさい」
 蓮は両耳を塞いだ。
「ありがとうございます」
 外野でそんなことが起こっているとはつゆ知らず、莉子はコツを教えてくれた順正に礼を言った。莉子はもともとは、礼儀正しく、素直な性格である。
「ちょっと間をおいて、またやってみます…」
 莉子は幾分、はにかんだ顔をしていた。順正の目をまともに見れない。
─先生はいくつなんだろう。 
 若々しく見えるが、もしかしたら文也よりも年上かもしれない。
「…」
 順正は莉子より先に壁の下から出たが、後ろを振り返り、莉子を見るともなしに見ている。
「えっと…なにか…」
 莉子は順正に見られていることを自覚すると、まともに息ができない。順正は何か少し考えているようだったが、おもむろに数歩、莉子に歩み寄り、身を屈めた。
「佐藤さんのお母さんは、もうすぐ臨月を迎えるね」
「あ…は、はい」
「佐藤さんも…もうすぐお姉さんだ」
「…」
 莉子の反応を、順正は静かに見守った。莉子の目からは、希望や期待よりも、動揺や不安といった感情が読み取れた。
「…楽しみ?」
「…私は…心配です」
「…心配、なんだね」
 心配は、一つではない。莉子は寂しさゆえの、自分の心配を話してしまいたい気持ちに駆られた。
─あの家に、いていいのかな…
 だけど、それでは子供だと思われてしまうかもしれない。莉子は拳を握った。
「はい。無事に…出産できるのか…できますよね?」
 自分の心配はぐっと飲み込み、母親の体の心配を口にした。
 順正は少し、顎を引いた。その問いには、誰も答えられない。
「出産は命がけだよ」
 順正は囁くような小声で言った。
─えっ?
 莉子は、思いがけない言葉に、目を見開いた。
 順正は莉子の反応はお構いなしに、視線を奥の壁に向けて静かに言った。
「お母さんの経過は、順調そのものだけど、それでも、何があるのか分からない。それがお産というものだから」
 莉子は、この時ばかりは恥じらいを忘れて、順正の目を食い入るように見つめた。順正の声は、深刻みを帯びていない。だから、美穂にはリスクがあると、遠回しに警告されているわけではないのだろう。けれども、何かを優しく諭そうとしている。
「だからいつも…伝えたいことは、その都度、伝えるようにしておくといい」
 医療が整っている現代では、母体死の確率は極めて低い。しかし、確立としてはあることだった。莉子もそういう事情は、なんとなくは知っているだろう。
「は…はい…」
 莉子が返事をすると、順正は莉子に背を向け、壁から離れた。脅すつもりでもなんでもないけれど、後悔の芽を、摘んでおくに越したことはなかった。
「…」
 莉子は順正の意味深な言葉が腑に落ちるまで、しばらくマットの上に佇んでいた。
 順正はさっとマットから降り、すたすたと受付スペースのほうへ入った。休憩スペースを横切る時、何やら痛い視線を感じたような気がしたが…。

 

 


 

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