妊娠初期は、身体が急速に変化し始める時。
それに伴い、精神的にもいろいろな影響を受けます。
本稿では、妊娠初期の心と身体の変化について、講師の個人的な体験を踏まえお伝えします。
妊娠初期の心と身体の変化
つわりなど妊娠初期症状
私は妊娠5~12週くらいまで、つわりに悩まされました。
吐いたことは両手で数えられるくらいの回数しかありませんが、それでも最初の数週間は、ひどい船酔いになりました。
吐きづわり、食べづわり、よだれづわり。
寒い季節であったので、身体が冷え、だるく、夕方には、気分が悪くなって両手に突っ伏しているか、寝ていることがほとんどでした。
息切れ、動悸も感じ、妊娠前と同様の生活や仕事をすることは無理でした。
コロナで緊急事態宣言が出る中、気晴らしに外に行くこともできず、寒い家の中でずっと一人で過ごしていました。
メンタル的に不安定となり、実家にお世話になることで、少し難を逃れました。
つわりには個人差がある
一方、二人の子供をもつ姉は、そのどちらを妊娠しているときも、つわりがひどかったといいます。
食べたら吐き、食べなくても吐き、ケトン体が出て、産婦人科で点滴を受けるほどでした。
久しぶりに実家に帰省した時、姉は二人目の子供を産んだばかりでした。
甥っ子が時々、「うえっ」という仕草と声を出すのを見て、何かと思ったら、姉が妊娠中の嘔吐の様子をまねていたのでした。
一方、義母や義姉はまったくつわりがなかったといいます。
無性にカップやきそばが食べたくなったくらいだ、と。
つわりの原因
妊娠初期にごく一般的に生じるつわり。
その原因ははっきりしていませんが、ヒト繊毛性ゴナドトロピン (HCG)が部分的に関与していると考えられています。
妊娠のごく早い段階で胎盤がこのホルモンを生成し、黄体の早期分解を防ぎ、胎児を異物として認識しないよう助けてくれます。
約12週間後に HGCが次第に減少して胎盤がしっかりと確立されると、吐き気が収まってくるはずです。
また不安感や消化器系の停滞によっても、つわりが生じることがあります。
ホルモンの増加に伴う諸変化
妊娠初期は、ホルモンの増加によって、 平滑筋組織織が弛緩して柔らかくなり、子宮が拡大して空間を作ることができるようになります。
この軟化は子宮には良いことですが、ほぼ平滑筋組織のみで構成される消化管の働きを弱めてしまいます。
そのため、便秘、ガスの発生、消化不良が妊娠の初期段階で生じます。
頻尿もまた、過剰なホルモンと体液の増加により生じます。
身体の中で非常に多くの活動が生じているのですから、特に妊娠初期において疲労を感じることは無理もありません。
ヨガの練習
私は妊娠初期に、全くヨガをしませんでした。
お腹の子供に何かあったらと、それが怖かったのです。
しかし、中にはヨガをやめる必要を感じなかったという妊婦さんもいます。
吐き気を催しているときは立位のポーズが役立つことがあるようです。
立位のポーズは気分を落ち着かせ、身体を安定させ、血行を高めてくれるのです。
支えのある前屈のポーズやリストラティブのポーズも、つわりを緩和することがよくあります。
ただし、一般的にはマタニティヨガを始めて良いのは安定期に入ってからとされています。
特に流産を経験したことがある人は、妊娠初期はヨガの練習を控えましょう。
妊娠初期に出血が生じた場合なども、必ず、妊娠が安定してからヨガを始めましょう。
>>【マタニティヨガ】いつから始める?妊娠中や出産で期待できる5つの効果
また、妊娠中は、ねじりのポーズを控えることを勧めています。
ねじりの動きは、システムを浄化して洗い流すのを促進します。
この時期に身体に排出する合図を送りたくはないでしょう。
人の感情や意見を自分と同一視しない
妊娠中の悩みは、妊娠できたという幸福の上での、幸せな次元での悩みです。
大きな目で見れば、小さな悩みなのかもしれません。
けれど、妊娠中に様々な心身の不調を体験するのは確かですし、その悩みの深刻度も人によって様々です。
夫や母との関係性
つわりがひどかった妊娠初期の頃、夫と会話もスキンシップもなくなり、思いやりのある行動がお互いに取れなくなった時期がありました。
夫が、私と同じくらいの週数で、教師の仕事をしている同僚の話をすることがありましたが、それも気に入りませんでした。
働いている人もいるんだからしっかりしなよ、と言われたわけではありません。
けれど、妊娠中の仕事量を比較されているように感じたのです。
妊娠中の体調やメンタルは人によって異なるのですから、
「妊娠中の妻の状態を誰かと比較するなら、自分の仕事の手腕や給料を、誰かの夫と比べられた時のことを考えてみればいい」
と心の内でひそかに悪態をついていました。
実家に帰って、少しは快適に過ごしていたのですが、母からひっかかる言葉をもらうことも多々ありました。
「私は妊娠中も、家族の世話をしながら働いていた」
「お姉ちゃんは産休まで、ギリギリまで仕事をしていた」
「甘えとっちゃいかん、自分に厳しくせんと」
妊娠初期の間、母には本当に世話になりました。けれど、どこかで無償ではない気がしていました。
真実(サティア)
体調が悪い時は、どんなことでもマイナスに捉えたり、被害妄想をしたりしがちでした。
けれど、人からの言葉や態度、またはそこから憶測した杞憂によって、自分の本心が見えなくなってはいけません。
「働いてないから、非難されている。働かなくちゃいけない」
「甘えていてはいけない」
それは、あなたの本心でしょうか?
本当に必要だと思っているのでしょうか?
誰かの言葉を、自分の気持ちのように置き換えないでください。
もちろん、客観的な目線で、自分の甘え過ぎ、行き過ぎを防ぐことは大切ですが、だからといって、誰かの意見に乗っ取られたりしないで、自分を見失わないでください。
他人のエネルギーや気持ちを自分の中に入れないこと、同一視しないためには、瞑想などの練習で、内側に意識を向けることが役立ちます。
私のこのような夫や母への不信と不安は、安定期が近づくにつれ薄れ、物事を楽観的にとらえられるようになり、元の関係性に戻りました。
妊娠初期に不安になっても、きっと、いつか解放される時がきます。
与えるために、与えられることを恐れない
子供を産んでからの母親の役割は、ひたすら「与えること」です。
与えられる人になるためには、どうしたらいいのでしょうか?
それには、誰かから十分与えられて育てられてきた、自身の乳幼児期の経験が必要です。
記憶になかったとしても、しみついているものなのです。
もし、あなたが乳幼児期に十分に与えられなかったり、思いやりを見せてもらえなかったりした子供であるならば、
なおさら、妊娠期に誰かに甘え、与えられることを、怖がらないでください。