世界中で愛されているスリランカの紅茶「セイロンティ」。
本稿では、セイロンティの種類(産地)、製造過程、等級など、セイロンティの基礎知識をお伝えします。
標高差の違いで気候が異なる国・スリランカ
スリランカは、インドの南東に位置する、インド洋にしずくのような形をした小さな島です。
面積は北海道よりも一回り小さく、九州よりも少し大きいくらい。
島の中央やや南側よりには、南北に山脈が連なっています。
赤道に近いため基本的に一年を通じて暑く、茶摘みが年中出来ます。
スリランカの主産業・紅茶
スリランカの主産業になっているのが紅茶です。
なんと政府に、紅茶局があります。
品質の高い紅茶は、セイロンティと呼ばれ、世界中で愛飲されています。
セイロンティと一口にいっても、産地によってずいぶんと特徴が異なります。
その理由は、標高差が大きいこと。
ちなみに、五大産地といわれているのが、ルフナ、キャンディ、ヌワラエリヤ、ウバ、ディンブラです。
標高別に、次のように区別されています。
区分 | 標高 | 代表的な産地名 | |||||
ロウグロウン | 海抜0~600m | ルフナ | |||||
ミドルグロウン | 海抜600~1200m | キャンディ | |||||
ハイグロウン | 海抜1200m~(※一番高い所は海抜2000mを超える) | ヌワラエリヤ、ウバ、ディンプラ |
同じ時期でも、場所によっては真夏の気候のところもあれば、初冬を思わせるような気候のところもあるのです。
これほど気候が違うので、産地ごとの特徴がとても際立っています。
モンスーンに影響を受けるクオリティシーズン
スリランカは島モンスーンの影響を強く受け、このモンスーンが紅茶のクオリティシーズンに大きな影響を及ぼします。
クオリティシーズンとは、香気成分が最も充実した、高品質の紅茶が出来る時期のことです。
地域ごとのクオリティシーズン
産地 | 乾季(クオリティシーズン) | ||||||
ディンブラ | 12~3月 | 北東モンスーン。北東から風が吹き、その風に乗って雨が降る。北東風が中央山脈に当たったあと、山の反対側に乾いた風が吹く。 | |||||
ヌワラエリヤ | |||||||
ウバ | 7~9月 | 南西モンスーン。島の南西部は雨が降るが、中央山脈を越えると乾いた風が吹く。 | |||||
キャンディ | モンスーンの影響をそれほど受けず、年中平均してよい紅茶がとれる。 | ||||||
ルフナ |
一芯二葉
プラッキングに最適な葉っぱは、ひとつの芽とその下についている二枚の葉っぱを一緒に摘むことだと言われています。
この理想的な葉っぱは、一芯二葉と呼ばれています。
一芯二葉の良さは、葉っぱ自体が若く柔らかいこと。
それは紅茶のおいしさのもとになるポリフェノールなどの含有量が多いことを意味します。
紅茶の製造工程
紅茶はどの様にして製造され、販売されるのでしょうか?
紅茶の茶摘みから販売までの工程は次の通りです。
- 摘む
- 萎凋<イチョウ>(茶葉を萎れさせる):熱と乾燥により様々な化学反応が起こり、香りが立つ。
- 揉む:茶葉の組織が壊れ、酸化酵素による酸化発酵が加速する。
- ほぐして、ふるいにかけて分ける
- 酸化発酵を待つ
- 乾燥させる
- 茎などを除去
- 等級分け(OP・BOPなど)
- オークション(入札)でティーメーカーに売却する
- ティーメーカーがブレンドしてパッキング、製品化される。
紅茶の等級
紅茶は、リーフグレードという等級があります。
等級といっても紅茶の品質を表すわけでなく、紅茶の茶葉の大きさを区別するものになります。
紅茶は茶葉の大きさによっても、それぞれと特徴・特性があります。
主な等級は以下の通りです(これ以外にもあります)。
OP(オレンジペコー) | 細長く捻じれた茶葉で、柔らかい葉とティップと呼ばれる芯芽を含んでいる。抽出したお茶の色は、薄く澄んでいて明るい色をしている。香りは強め。 | ||||||
P(ペコー) | OPよりも固くて太く短い茶葉。OPと比べて、お茶の色は濃く、香りも強い傾向。 | ||||||
S(スーション)・PS(ペコースーチョン) | P(ペコー)よりもさらに固く太い。色は薄く、香りも弱い。 | ||||||
BOP(ブロークンオレンジペコー) | OPをカットしてふるいにかけた、細かい茶葉。ハイグロウンやミドルグロウンで多く作られる高級品。水色はオレンジ色で透き通るような透明感がある。香り豊かで味はまろやか。 | ||||||
BOPF(ブロークンオレジンペコー ファニングス) | BOPをふるいにかけるなどした、さらに細かい茶葉。BOPよりも濃く、香りも出やすい。上質なティーバッグやほかの茶葉にブレンドされるなどに使われることが多い。 | ||||||
F(ファニングス) | 細かい茶葉。ダストよりは一回り大きい。ティーバッグの原料に使われる。水色は濃く、渋味がある。 | ||||||
D(ダスト) | 最も細かい茶葉。ティーバッグの原料となる。ダストの中でも繊維の量により等級分けがある。 |
オレンジは中国福建省の言葉で「橙黄(デイオウ)」といい、果物のオレンジとは全く関係がありません。
紅茶を淹れると黄色みがかった橙路になったことから、紅茶の水色のことを表現したものです。
ペコーは「白亳(ペッホウ)」、白いうぶ毛の部分という意味です。