本記事では、アーユルヴェーダが捉える微細な質「マハグナ」について解説します。
マハグナ(偉大な3つの性質)とは、サットヴァ、ラジャス、タマスです。
マハグナとは
この世の万物の性質を構成する極めて微細な要素です。
マハグナよりも粗(そ)な要素としては、パンチャマハブータ、ドーシャがあります。
サンスクリット語でmahaは「偉大な」、gunasは「結合すること」を意味します。
3つのマハグナ
3つのマハグナは、地上全ての生物の原因因子となります。
3つのマハグナとは、サットヴァ、ラジャス、タマスです。それぞれ、何を表しているか、また、その要素を持っている時の私たちの状態については以下のとおりです。
サットヴァ
調和、バランス、光。視野を広げ心を開きます。明瞭さ、心の平和。
心:愛情、やさしさ、直観力が働く状態。
行動:感覚の使い方が正しく、困難を乗り越えられる強さ、自分で決めたことをやり遂げられる力がある。
自己認識:自己の精神とつながりをもっていて、自己本位でない。誰かの役に立とうとし、他人のことを気にかけ、敬意を払います。
知覚:良い判断、正直
ラジャス
動性、移動性、動乱、注意散漫。心を低下させます。
心:考えすぎてコントロールできない、関係性がうまくいかない。痛み、苦しみを生み出す。
行動:性欲が強まる、感覚器官に影響される、攻撃的になり、競争心が強くなる。
自己認識:欲求が生まれる。利己主義。達成したい、目立ちたいという気持ちが強くなる。
知覚:批判的。視野が狭い。
タマス
惰性、鈍感、暗闇、妨害。心を閉ざします。無知、欲望。
心:過去にこだわる。惰性、依存性が高まる。
行動:怠け者。他人の影響を受けやすい。依存性が高まる。
自己認識:自分に対する否定的な感情が浮かんでくる。いつわり。肉体への過剰な意識。孤立。
知覚:知性に欠ける。鈍感。正直さに欠ける。他人の意見を聞かない。
現代はラジャスからのタマスの方向に向かっている
昭和20年8月・・・2度の原爆投下、終戦となったことから、8月になると戦争に関わるドキュメンタリーやドラマが多く放映されますね。
戦争の悲惨さとともに伝えられるのは、食。極度の食料不足で、ほしいものも手に入らなかった。
戦争を経験したことのない、戦後生まれの私には想像ができない時代です。
今では、各家庭での食べ残し、スーパーでの売れ残り、レストランでの食料の廃棄……
食料が手に入らないどころか、食料が捨てられる時代。
お金さえあればほしいものはなんでも手に入る時代です。
企業はマーケティングを巧みにして商品を売り出し、競合し合います。
たとえば同じビールでも、5社が競り合い、マーケットには過剰な品種と量があふれ、売れなかったものは廃棄されていきます。
これが、私が考える現代のラジャス的側面の一例です。
過剰な物、過剰な競合、過剰な購買。
けれども、これらが必ずしも私たちを幸せにしてくれるわけではないことは、よく想像がつくと思います。
それから個人の行動と心の在り方。
オーバーワークの後に疲れて帰ってきて、スーパーに陳列される値引きシールの貼られたお惣菜を買い、テレビを見ながら食べることに集中もせず一人でご飯を食べる。
これにより心と身体には、どのような影響があるでしょう?
お惣菜をお皿に盛り直して、家族で食卓をかこみながら、今日の料理は家族になんて思われているのだろう、でも私だって働いているんだから文句言われたってたまらないわよ、と心に批判への恐れと不満の感情を溜め込む。
心と体に与えられるものとしては、何があるでしょう?
これらは暗く、重く、腐った、鈍いタマスの質があります。
過労でうつになる、自殺願望なども、まさにラジャスからタマスの一途をたどっている極端な状態です。
日常にマハグナの概念を取り入れる方法
私たちは、日常の生活の中で、常に、今の状態が「サットヴァか?」「マハグナの割合は?」を自分自身に問う必要があります。
バランスと調和のとれたサットヴァな状態に向かっていくのか、それともそこから離れ、ラジャスやタマスに向かうのかは、食べたものや自分がした行動にかかっています。
なので、食べ物や行動、その他全てに関する、日々のどんな小さな選択にも注意を払う必要があります。
これは是非、みなさんにやってほしいことです。
新しいことを取り入れるよりも、今やっていることからラジャス的、タマス的なことをやめる。
こちらの方がはるかに簡単で、効果があることもあります。
例えば私は、去年の7月こんなことを自分にコミットしました。
・夜9時以降はスマホ(facebook)を見ない
・全部食べるものをそろえてからご飯を食べる
・炭酸水をやめる
自分の乱れに自ら気づき、どうしたら整えられるか考えましょう。
自分をサットヴァに導く選択をすることこそが大切です。
自分自身に制限を設けることをやめる
もしあなたが自分自身に対しタマス的な感情、たとえば、
──「人から嫌われている」「クラスの中で一番ブサイクだ」「太っている」「誰の役にも立っていない」──
を持っているのなら、その感情をゴミ箱に捨ててしまいましょう。
そう思うことが、自分をその感情(認識)と同一視してしまうだけで、他の人がそう思っているわけではありません。客観的に自分を見て、そのような感情が自分を窮屈にしていることに気付きましょう。
自分自身に制限を設けるのをやめて、前向きで柔軟な姿勢を保ちます。
過大評価(ラジャス)も過小評価(タマス)もせず、自己の真実の状態を見ましょう。