妊娠中の食事についてご紹介します。
妊娠中の食事
妊娠中の必要以上の体重増加は妊娠高血圧症候群や難産の原因になります。
一方、必要な栄養まで摂らないのも問題です。
胎児の順調な発育のためにも、妊娠中はより多くの良質な栄養を摂らなければなりません。
必要な栄養は十分に摂り、しかも体重を適切な範囲で上手にコントロールすることが重要です。
なぜ栄養が大切なのか
妊娠中に必須栄養素をまんべんなく摂ることは、以下の点で重要です。
- 胎児の発育
- 母体の子宮や乳腺の発達
- 血液量の増加
- 代謝の亢進
- 合併症(妊娠高血圧症候群・糖尿病・貧血・便秘など)の予防
- 出産時の体力をつける
- 母乳がよく出る
- 産後も健康で美しく過ごせる
妊娠中の食事のポイント
1日3食バランス良く食べる
朝食を抜いたり、夕食に偏ることなく、3食を規則的に摂ることが大切です。
また、1回の食事に主食・主菜・副菜・汁物を組み合わせると、自然にバランスのとれた食事となります。
主食 | 炭水化物でエネルギーを補給します。玄米や胚芽米、三分づき米や五分づき米、大麦、ラ イ麦パンや全粒粉パンをとりいれるとミネラル・食物繊維の量が多くなります。 |
副菜 | ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富な野菜・海藻・きのこを摂りましょう。1日合計350g(うち、緑黄色野菜が120g以上)以上食べるのが目標です。 |
主菜 | 肉または魚、豆・大豆製品など、たんぱく質と鉄を含む食品をたっぷりと、偏らずに摂りましょう。魚には胎児の脳の発達に欠かせないDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれています。 |
汁物 | 様々な食材と相性が良く、余った野菜などの活用も簡単です。 塩分を控えるには、出汁を取ること、調味料を使いすぎないようにすることが重要です。 |
規則正しい食事
食事は1日3回、決まった時間に食べましょう。
不規則な食事は食べすぎや偏食につながります。
朝・昼をしっかり食べることで、甘いお菓子の間食や、タ食の食べすぎも防げます。
塩分は1日6.5g未満を目標に
1日6.5gというのは、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の基準ですが、理想としては、これよりもっと少な目にしたいところです。
塩分の摂りすぎは、むくみや血圧上昇などの原因となります。
塩分を控えめにするために、次のような点に注意しましょう。
- 炊き込みごはん、チャーハンなど塩味のついている主食は1日1回までにする。
- ラーメン、うどんの汁は残す。
- 塩分の多い食品(塩鮭、たらこ、佃煮、漬物など)は食べない。
- ハム、ベーコン、プロセスチーズ、ちくわ、はんぺん、かまぼこ、干物など、肉・魚・乳製品の加工品はひかえめする。
- 食品添加物や化学調味料の入った食品をなるべく利用しない。
間食の量と内容に気を付ける
間食は乳製品や果物がおすすめですが、食べすぎには注意が必要です。
また、摂取kcalとしては摂取総kcalの一割以下にとどめたいものです。
個人差がありますが、1日200kcal位までを目安としましょう。
清涼飲料水やスナック菓子はできるだけひかえます。
一日に必要なエネルギー量
一日に必要なエネルギー量は、非妊娠時と比べて多くなります。
身体活動レベルや、妊婦の体格により、摂取カロリー量は異なります。
非妊娠時と比べて、それぞれの時期にどのくらいエネルギー量が追加で必要になるか(目安)を、次の表で表します。
妊娠初期 | ~13週6日 | 非妊娠時より+50kcal |
妊娠中期 | 14週0日~27週6日 | 非妊娠時より+250kcal |
妊娠後期 | 28週0日~ | 非妊娠時より+450kcal |
授乳期 | 母乳を与えている | 非妊娠時より+350kcal |
体重管理で気になる場合は、意志、助産師、看護師、管理栄養士または栄養士に相談しましょう。
エネルギー量を抑える調理のコツ
- 油脂の少ない食材を選ぶ。
肉は脂肪の少ない種類と部位を選んだり、皮を除いたりします。 - 油を使わない調理方法を工夫する
ゆでる、蒸す、グリルや網で焼く、ホイルに包んで焼くなど。 - ノンオイルの調味料を選ぶ
ドレッシングは油が少ないタイプにし、マヨネーズも控えめにします。
レモン、果実酢、二倍酢、ごま、しそ、大根おろし、ハーブ類、香辛料などを
活用するのも良いです。
妊婦がしっかり摂りたい栄養
カルシウム
食生活の豊かな現代でも不足しがちなのがカルシウムです。
1日に最低限摂りたい量は非妊時、妊娠時、授乳中とも、650mgです。
カルシウムを多く含む食品
乳製品(牛乳、無糖ヨーグルト、チーズ)納豆などの大豆製品、小魚、しらす干し
鉄
胎児の発育に欠かせない鉄も、すべて母体から供給されます。
妊娠中期・後期は、母体の血液量の増加や胎児への供給などで、より多くの鉄が必要になります。
へモグロビンは鉄とたんぱく質からつくられます。
鉄は赤身の魚や肉に多く含まれるヘム鉄が体によく吸収されます。
また、植物性たんぱく食品に多く含まれ非ヘム鉄も、動物性たんぱく質・ビタミンCといっしょに摂ると、吸収率が上がります。
鉄を多く含む食品
赤身肉、かつお、あさり、ホタテ、しじみ、卵、豆腐、納豆、大豆、ほうれん草、小松菜
ビタミンB6
造血作用があり、つわりの軽減にも役立ちます。
ビタミンB6を多く含む食品
魚・肉、豆、穀物、バナナ、パプリカ、さつまいも
葉酸
胎児の健やかな成長に欠かすことのできない栄養素です。
妊娠初期の不足は、胎児の脳神経の発育に支障をきたすことがあります。
つわり予防にもなり、造血作用もあります。
葉酸を多く含む食品
緑黄色野菜、枝豆、ナッツ
>>【造血のビタミン】葉酸を多く含む食品と調理における注意点
亜鉛
造血作用があります。
亜鉛を多く含む食品
牛肉、豚肉、卵、納豆、貝類(特に牡蠣)
食物繊維
便秘を防ぐためには食物繊維を多く含んだ食品をたっぷり食べましょう。
食物繊維を多く含む食品
豆・大豆製品、いも類、根菜類、綠黄色野菜、干柿、果物、切干大根、きなこ、おから
いかがでしたでしょうか。
普段にもまして、食事に気を配る必要のある妊娠時。
けれど、妊娠中は様々な心身の変化に対応するだけで精一杯、というのが本当のところかもしれません。
つらい時は、夫や、両親やきょうだいなどの家族、友達、近所の人、家事代行サービスをお願いするなど、周りの人に助けてもらいましょう。