消化の火・アグニとは│アーユルヴェーダ基礎知識

炎 アーユルヴェーダ

本日は「消化力」について書きます。
アーユルヴェーダでは、消化力(消化の火)のことを、「アグニ」といいます。

消化というと、食べ物の消化のことを思い浮かべると思いますが、もっと広義の消化を指します。

私たちが五感(聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚)を通して取り入れるもの、全てのこと・ものを消化する力で、私たちはそれを意識に変換するか、毒素に変換するか、二つに一つです。

「変換」するという意味で、アグニは「火」のイメージでとらえられますが、ピッタ(ドーシャの一つ)とは異なりますので、ご注意下さい。

今日はこのアグニという言葉とその概念について覚えてもらえたら幸いです。

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アグニ(消化力)の重要性

今日の講義のテーマは「アグニ」についてです。

アグニは消化の火・消化力のことで、食べ物を消化する「消化」だけでなく、5感を通して取り入れるもの全ての「消化」を含みます。
見たもの、聞いたもの、におい、触れたもの、食べたもの、5感以上(第六感)のもの……
人生経験に対する「消化」も含みます。

アグニの概念はアーユルヴェーダの中で最も大切といっても過言ではありません。
なぜなら、アグニが弱まることにより、私たちの身体にアーマという毒素が溜まり、それがすべての病気の素となると考えているからです。

食べ物の消化

昔何かのテレビ番組で、こんな話がありました。

ある病気を抱えている母親が、息子さんの急死に遭い、何日も食べ物を食べられないでいました。
すると、もともとあった疾患が、治ってしまった、という話です。

決していい話ではありませんが、これは、食べ物が毒素になり、小さな疾患から大病、死を招く素になっていることのたとえです。

心・人生経験の消化

繰り返しますが、アグニを弱めると、取り込んだものを消化できなくなり、それが蓄積し、最終的に毒素となって、私たちの体や心に悪い影響を及ぼします。

前述のように、これは食べもののことだけではなく、5感を通して取り入れたもの──心・精神に影響を及ぼすもの──の消化もあてはまります。

みなさんにこんな事柄はありませんか?

  • 後悔していること
  • いつまでも忘れられない妬み、怒り、悲しみ
  • 誰にも言えずに自分の中で押し殺した思い
  • 愛情を注がれなかったことに対する歪み
  • トラウマ

これらは、人生の中で経験したことをうまく消化できなかった結果、心に刻まれた毒素です。

人生の未消化物が残ると、知らず知らず、私たちの行動や思考に偏りを与えてしまいます。

アグニが弱い時に出る症状

私たちはアグニを強く保ち、丈夫な体を作り、日常のあらゆる至難に立ち向かえる精神を養わなければなりません。

もし、アグニを弱めてしまったら、なるべく早期にリカバリします。

アグニが弱い時に出る症状には次のものがあります。

  • 身体が重い
  • 空腹感がない
  • 常にお腹が空かない
  • 舌苔がつく
  • 便が黒く沈む
  • 尿、便、汗が臭い
  • 口臭がきつい
  • 疲労
  • 風邪
  • 頭痛など肉体的な不調を感じる
  • 怒り、混乱、不安、恐怖を感じる
  • 精神的な不調を抱えている
  • ネガティヴ思考に陥る

アグニを弱める原因

アグニを弱める原因は何でしょうか?

原因を理解することで、私たちはアグニをリカバリする方法について学びを得ることができます。

アグニを弱める行動について描いた漫画があります。

漫画で分かるアーユルヴェーダの中で、ヒロインの兄・篤が、大学の飲み会においてアグニを弱める行動を行い、アグニがへとへとになってしまう場面。

アグニは火のイメージです。
火がどんな時に消えるのか思い浮かべれば、日々のどんな行為が、アグニを弱めるのか分かります。

  • 冷たいものを取りすぎる、必要以上に食べる
  • 前に食べたものが消化しきれていないのに、また食べる
  • 食べているものが体質・体の状態と合っていない
  • 食べることに集中していない(話過ぎる、何かをやりながら食べる)
  • だらだら長い時間をかけて食べる

また、精神的な消化に関していうと

  • ストレスを感じている
  • 過度の緊張・悲しみ・怒りを常に感じる
  • 感情を吐き出せない

アグニを弱める原因についてご理解頂けましたでしょうか?

アグニを回復するために行うと良いこと

では、最後に、アグニを回復する方法についてみていきましょう。

  • よく噛んで食べる
  • だらだら食いをしない
  • げっぷが出たら食べるのをやめる=消化できる量を食べる
  • 適量を食べる(少なすぎもNG
  • 自分の内側に意識を向ける
  • サットヴァな生活
  • 自然とのつながりを感じられるような食べ物(新鮮な野菜や果物)を食べる
  • 感謝をささげる
  • ジャンジャーアペタイザ(生姜スライスにひとつまみの塩とライムの絞り汁をかけたもの)を食べる
  • 一食スキップする
  • 無理のない程度に断食をする
  • お腹が空いてから食べるようにする
  • お粥など消化に優しいものを食べる
  • 規則正しい生活をする、適度な運動をする
  • ストレスの原因となっていることをやめる
  • 心を許せる人と感情をシェアする
  • 一週間に一日、キッチャリーデイをつくる

たくさん方法があります。
自分がすぐにできる簡単な行動が一つはあるはず。
アグニの状態に意識を向けて、弱まっているようなら、上記の解決法を試してみてください。

 



いかがでしたでしょうか。

アグニを強く保つことは、いつまでも健やかで若々しく、前向きな自分でいるための第一歩です。

アグニを回復するための方法のうち、普段の生活でできる一番簡単なことから始めてみてください。