生理に関する悩みは人それぞれですが、「何かしらの悩みがある」という方も多くいらっしゃいます。
本稿では、それらを改善していくための第一歩として、生理のしくみ、メカニズムについて解説します。
生理の諸症状
当教室が横浜にあった時の、とあるレッスンでの出来事です。
アーユルヴェーダ料理教室に来た生徒さんたちに、最近の体調を尋ねる中で、共通のお悩みを抱えていらっしゃる生徒さんがいることに気がつきました。
最近生理を終えた方が多く、今月の生理はきつかったと仰るのです。
最近の急激な天候の変化(西日本を中心とした豪雨、その後三連休にさしかかって急激な気温の上昇・連日の猛暑)によるものではないか、などと話し合いました。
生理前・生理中の症状として、むくみ、頭痛、めまい、生理痛があり、こんなにも同じ悩みを抱えていたなんてと驚きました。
生理に関する悩みは、生活習慣・食習慣に関わるところが大きいですが、私たちはなかなかそれを見直すことができないものです。
そこで、本記事では生理とは何か、生理のメカニズム、生理が起こるしくみを生理学的に解説します。
これを理解することで、一番欲しい情報である「どうすれば良くなるか」を見た時に、「なぜ良くなるのか?」がしっくりきて、生活を見直そうという気持ちが起きるはずです。
※掲載情報にはできる限り正確性には配慮していますが、結果は人により異なる場合があり、特定の結果を保証致しません。また、医療行為・医学的なアドバイスではありません。
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生理に関わる内分泌系と生殖器系
私たちはよく「女性ホルモンの乱れのせいで」生理周期が安定しないとか、生理が重かったといいます。
女性ホルモンは子宮で分泌されるので、私たちは子宮から生理が始まるように考えがちですが、実は女性ホルモンを分泌するようにと指令を出している脳から、生理は始まっています。
女性ホルモンは「視床下部」⇒「下垂体」⇒「卵巣」の働きによって分泌されます。
「視床下部」がホルモンの分泌を「下垂体」に対して促します。下垂体では、次の二つのホルモンを産出・分泌します。
①卵胞刺激ホルモン(FSH)
②黄体刺激ホルモン(LH)
このホルモンが血液によって身体をめぐり、卵巣に届くと、卵巣が次の2つのホルモン(一般的に女性ホルモンといわれる)を産出・分泌します。
①卵胞ホルモン
②黄体ホルモン
視床下部
視床下部は内分泌系の非常に繊細な部分で、脳の感情中枢付近に存在しています。また、体の基本欲求である飢え、喉の乾き、性欲、体温などを記録する働きがあります。
感情の変動(ストレス)や身体的病気から影響を受けると、視床下部が間違った、または不完全な情報を送ってしまい、女性ホルモンの分泌が過剰、あるいは不足し、体のバランスが崩れてしまうのです。
松果体
松果体(しょうかたい)は、脳の中央、2つの大脳半球の間、左右の視床体に挟みこまれるようにして存在している、小さな涙型の分泌腺です。
松果体は、光の明暗に反応し、睡眠を助けるメラトニンというホルモンを作り出します。松果体は、日々浴びている自然光と人口光の量を記録してそれに反応するだけでなく、季節的な変化にも反応し、お隣の視床下部との関係も密接です。
メラトニンには、主に次の3つの働きがあり、正常に分泌されないと、ホルモンバランスが乱れてしまう原因になります。
①抗酸化作用があり生殖細胞が活性化する
②ホルモンバランスを正しいリズムに改善する
③卵胞ホルモンが過剰に作られるのを防ぐ
ちなみに、「我思う、ゆえに我あり」という命題で有名なフランスの哲学者・デカルトは、松果体を「魂のありか」と呼び、「精神の座」と考えました。
また仏教における「第三の目」は、松果体を表すものとされています。
生理はどのようにして起こるのか
視床下部の指令により下垂体がFSH、LGを分泌し、卵巣でまずはエストロゲン、次にプロゲステロンが順番に作り出されます。
図を見てみましょう。エストロゲンとプロゲステロン量は月経初日に最も低い値を示します。
エストロゲンの増加が排卵の直前まで続き、その間に卵巣の中で卵子が成熟します。それと同時に、子宮内膜が発達して肥大し、卵子が成長できるような安全かつ栄養の豊かな場所が形成されます。また、膣への血流が高まり、子宮頚部が滑らかになり、精子が侵入しやすい環境が作られます。
エストロゲンは生理周期の前半をコントロールし、排卵と生殖の準備を整える役割があるのですが、この時期に最大量に達したエストロゲンは、感情にも影響を与えます。
※エストロゲンは感情に左右される視床下部の刺激を受けて形成されるもので、鶏と卵の関係のようでもありますが。
また、女性の月経周期と月の満ち欠けは関わりがあるように言われていますが、それに沿うと、ちょうど満月が生理の時期にあたり、新月に排卵を迎えます。
満月から新月に向かう時期(エストロゲンが分泌される次期)は、デトックス、心の浄化の時期です。心身に可能性が満ちて、性欲が生じ、外交的かつクリエイティブになります。
しかし、エストロゲンのバランスが崩れると、生理痛や不妊症、子宮筋腫、そして激しい気分の乱れが生じます。
月経周期の後半は黄体化の段階であり、プロゲステロンが増加します。卵子が排卵を離れて子宮に向かい、身体が妊娠の可能性に向けて備え始めます。
卵巣の黄体が形成したプロゲステロンが、増加した血流にのって子宮に栄養を届け、子宮頚部に厚みのある粘液腺を形成して、バクテリアの侵入を防ぎます。
そして妊娠が起こらないと、エストロゲンとプロゲステロンの生成が激減し、子宮の内壁が焼失し、子宮内膜が月経血として排出されるのです。
新月(排卵)から満月(生理)に向かう時期は、月が満ちるように、私たちの心のキャパシティーを示すたらいの水が満ちて、感情がいっぱいいっぱいになります。
プロゲステロン生成量のバランスが取れていると、たらいの水が満ちても思慮深く、直観力が鋭くなりますが、プロゲステロンの量が過多になると、憂鬱感や倦怠感が生じ、たらいから感情があふれ出してしまうのです。
肝臓と腎臓による大掃除
最後に大きな役割を果たすのが、肝臓と腎臓です。
これらの臓器によって、過剰なエストロゲンやプロゲステロンが不活性になり、その他の環境有害物質とともに腎臓を通して排出されます。
しかし、肝臓が停滞する、あるいは過活動になると、効率的に機能しなくなり、不必要なホルモンが血流に再吸収されることがあります。
すると、過剰なホルモンが身体に存在する状況となり、多量な出血、不順、にきび、疲労、鬱、そして消化不良などの問題を抱える可能性がでてきます。
アーユルヴェーダにおける生理のしくみ・メカニズム
『スシュルタサンヒター』は、月経出血のことを「卵子の死を喫く酸の涙」と言っています。
月経出血は、死んだ卵子の葬儀のようなものです。
アーユルヴェーダにおいては、月経は、栄養が正しく吸収された場合に生成される「副産物(ウパダートゥ)」と考えられています。
アーユルヴェーダでは、7段階の身体組織(ダートゥ)があるとされ、食べ物が消化されると、最初にラサダートゥ(Asthayi rasa dhatsu アスタイ·ラサ·ダートゥ)になります。
>>【アーユルヴェーダの基礎知識】身体の7つの組織「ダートゥ」とは
次の6つのダートゥに栄養を与え、形成するための基礎です。
ラサ·ダートゥは、ホルモンと栄養素を運び、二酸化炭素と酸素の交換も担っています。
このラサが各ダートゥに流れ、栄養を届けるのと同時に、 ラサが姿を変え、月経というウパダートゥ(副産物)を生成します。
※ラサのウパダートゥには、他に母乳(Stanya スターニヤ)があります。
アーユルヴェーダにおいて、女性の生殖ホルモンにあたるものは、アルタヴァ·ダートゥ·アグニ(artava dhatu agni)であり、プラーナ·ヴァーユ、サーダカピッタ、タルパカカパによって調整されています。
これらのサブドーシャのバランスの乱れが月経不順を引き起こすと考えられています。
いかがでしたでしょうか。
生理のメカニズムは、知っているようで、知らないものです。
毎月の生理は億劫だと思います。
しかし、生理は、25日毎、あるいは35日毎に体を浄化し、その月の間に蓄積した残骸や有害物質を全て集めて月経決とともに排出する作用をもちます。
そのため、アーユルヴェーダでは、月経決を生じる女性の方が、男性よりも健康上優位であると捉えています。
生理が憂鬱なものになるか、優れたデトックスになるかは、生活習慣病と同じように、私たちの日々の行いによって決まります。
別の記事で、私たちのどのような行動が、生理にどう影響を与えるのかお伝えしています。
>>生理が来ない(無月経)原因と改善策