アーユルヴェーダの知識の中核「グルヴァディ・グナ」について、実生活や自己の経験に当てはめて考えてみます。
自分の性質を理解し、バランスを取るために何をしたらよいのか、または何をやめるべきなのかが分かると、自分の心身をコントロールしやすくなります。
グルヴァディグナについて詳しく書いた記事はこちら
「濁」と「清(透)」
今日は「濁(picchila・ピッチラ)」と「清(vishada・ヴィシャダ)」です。
ヴァータ・ピッタ・カパのもつグルヴァディグナ
アーユルヴェーダでは人の体質を3つに(7種類に分けることも。実際には各要素の保有比率によってタイプは無限大)に分けます。
ドーシャがもつグルヴァディグナは各ドーシャによって異なります。今日取り上げる性質「濁・清(透)」に関していうと、以下の通りです。
ヴァータ | 透 |
ピッタ | 透 |
カパ | 濁 |
性質を実生活に当てはめてみる
自分の好きな視点で、実生活にあてはめてみましょう。
食べ物や行動の観点でたくさん想像できると、バランスが乱れた時に、どういう食べ物が、行動が、バランスをもたらすものであるかが分かるようになります。
食べ物
「濁」・・・シチュー、カレーなど煮詰めたもの、ポタージュ、スムージーなど粘性の高いもの、渋いお茶、コーヒー、無濾過ビール、濁り酒
「透」・・・スープ、フレッシュジュース、寒天、水、アロエ、清酒
性格
「濁」・・・はっきりしない、あいまい、心を閉ざす
「透」・・・明確、オープンマインド、清楚、純粋、清廉潔白
行動
「濁」・・・口を濁す、うそ、隠し事、ぐちゃぐちゃにする
「透」・・・まっすぐな行動、正直、隠し事をしない、整然とする
自然・物質
「濁」・・・濁流、雲、霧、もや
「透」・・・清流、光、しずく、雨
「濁」と「透」の例
実生活や個人の経験に当てはめて考えてみましょう。
日本のことわざで、「清濁併せ呑む」があり、意味は「(善人も悪人も受け入れるような)度量の大きいこと」です。
この中で「清濁」は善人と悪人、賢者と愚者などの意味で使われているようですが、グルヴァディグナの「清」と「濁」はちょっと違ったニュアンスの気がします。
生産性を濁す
世の中にはあいまいにしておいた方が良いこともあります。
公明正大で全てあけすけ、真実を話すことも大事ですが、時にはあらゆる状況を把握して、濁しておいた方がよいこともあります。
私は昔、ある作業能率を管理し、作業単価を決める立ち位置にいました。
現場に生産性調査を依頼し、場所ごとに生産性の違いとその要因を明らかにしようと躍起になったものです。
しかし、生データを見ると、首をかしげてしまうところがいくつも出てきました。生データをいじっているのでは?と思ったことも少なくありません。
かといって、それをクリアにすることばかりに注力するのも、考え物でした。なぜなら、正しい生産性を測ることの難しさや、日別必要生産数量の増減が激しいこと、設備の違い、人件費の違いがあり、完全な調査は困難でした。
これらを全てクリアにする労力を、全体のコストからしたらあまり影響の大きくない作業単価に対してかけるよりも、人件費×時間×間接費のようなざっくりなものに、他のことに注力する方が、生産的だったのではと、今も思います。
これは、時にはあいまいのままにしておいた方がよいと思った取り組みの例です。
個人の行動に置き換えれば、正直なところは正直で、胸にしまっておくべきことは胸にしまっておく、ということです。
濁った/透き通った食べ物と飲み物
今度は食べものの例です。
清酒と濁り酒という言葉があるので、お酒がイメージしやすい人もいるかもしれませんが、今回は、フレッシュジュース(透)とスムージー(濁)でイメージしてみましょう。
ドーシャ別では、「濁」質をもっているのがカパ、「清」質を持っているのがヴァータ、ピッタです。
カパにはなく、ヴァータとピッタで共通している性質に「軽」「動」「鋭」「硬」「流」「微」があります。
フレッシュジュースを飲むとどんな感じがしますか?口当たりがよくて、爽快で、消化にも軽い感じがしますよね。
ヴァータとピッタが持つ質「流」「軽」「清(透)」にあてはめることができるのではないでしょうか。
逆にスムージーはどうでしょうか?これは一般的に、ヘルシーなものと考えられていますが、数種類の果物や野菜を粉砕していて、フレッシュジュースよりは「固」「重」「濁」の性質をもっています。
「似たものが似たものを引き寄せ、相反するものがバランスを取る」という性質にあてはめれば、「固」「重」「濁」性質をもつカパは、スムージーよりもフレッシュジュースを取るべき場合もある、ということができますね。
ヴァータとピッタの場合は、その逆です。
ですが、ドーシャのもつ性質だけをみてフレッシュジュースとスムージーどちらかを選べばいいわけではないので、ご注意ください。
主に甘味(酸味も)、冷性の飲み物を摂ってよいのかどうか、その時の体調など、ホリスティック(総体的)な見方から判断する必要があります。
(※ヴァータの人が、冷たくて、消化しにくいローフードがいっぱい入ったスムージーを飲めば、さらに消化がきつくなるかもしれません。カパの人が、冷たくて、とても甘いフレッシュジュースを飲めば、血流を悪くさせ、太らせるかもしれません)
グルヴァディグナのその他の質
グルヴァディグナについて書いた記事、グルヴァディグナのそれぞれの質を1組2種類ずつ紹介したその他の記事は以下のリンクからご覧いただけます。
>>グルヴァディグナとは
>>「熱」と「冷」
>>「乾」と「湿」
>>「重」と「軽」
>>「粗」と「微」
>>「固」と「流」
>>「動」と「静」
>>「鋭」と「鈍」
>>「軟」と「硬」
>>「滑」と「荒」
いかがでしたでしょうか。
グルヴァディグナ、今日取り上げた「濁・清」について、皆さんも是非、イメージしてみてください。